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2024.07.05

トロントでの留学体験記-vol3

 6月のトロントは日本でいう新緑の季節だった。多くの木が暖かくなってきたことで柔らかい葉をつけ始める。私はメープルの緑が特に気に入っている。薄いメープルの葉は陽の光を通すと透けているように黄緑になる。私はその柔らかく光を吸収している色が気に入っている。 

 また6月は生徒の入れ替えの季節であった。私の多くの外国人の友達がここを去った。トロントに来る前までは日本が恋しくなるだろうと想像し、心構えがあった。しかし、私にとってはその寂しさよりも語学学校でできた友達と別れることが心から寂しくて仕方がない。そんなに思えるほどの友達ができて良かったと思う反面、予想していなかった感情に戸惑い、新しい友達を作ることを最近まで避けていた。深く人のことを知ろうとするほど別れが苦しいからである。だがその一方で、新しい生徒が大量に入学した。そのほとんどはヨーロッパや南米の生徒たちで休暇を利用して来たらしく3週間から2ヶ月と本当に短い。少しずつ友達との悲しみも薄れて来たが新しい生徒たちと話しても期間が短いことが分かるなど私にとっては苦しい月となってしまったというのが正直なところである。 

 今月はトロントでの病院、家電、LGBTQの捉え方について述べていこうと思う。先月までと比べると暗めの内容になってしまうかもしれないが、この葛藤や辛さもこの留学が終わった時に私の思い出となり、私を強くしてくれた経験の一つになると信じてありのままに記述していこうと思う。 

 

 614日から623日までの10日間体調を初めて大きく壊した。症状としては初めの3日間ほどは喉の痛みがあり、それ以降は頭痛がしていた。また、10日間にわたり発熱していたため、学校を欠席することになった。常に寝ていたが、7日間経った時、大きな不安を感じ、ホストファミリーに伝えた所病院に連れて行ってくれた。夜間だったということもありEmergency のゲートから入った。海外保険とパスポートを持ち、入ったが、その二つしか自分のことを守ってくれるものがないと思うととても心細く、またそこまで英語が話せない私にとっては「今日はどうしてきたんですか」というただの質問に正確に答えられないことが歯がゆく、苦しかった。腕に名前が書かれたリストバンドをつけると、問診所のような場所にまず呼ばれる。症状を伝え、耳の中を診てもらい、血圧、心拍を図られる。私の平熱は35.7度~35.9度であるため36.5度を超え始めると微熱を感じる。今回の体調不良では一日38度が出たもののそれ以降は36.6度~37.4度を行ったり来たりしていた。もちろんカナダでは日本よりも病院は貴重であるということは理解していたため、できる限り行かないようにしようと考えていた。だが一週間変わらなかったためにさすがに不安になったのである。しかしその感情を分かってくれる人はいなかった。その問診所でスタッフに「それは熱じゃない」と言われ、「そんなことで来たのか」というような目で見られた気がしたことが辛かった。その後、医者の診察を待つために待合室で待機した。実際に、私が訪れた病院だけなのか、それともカナダの病院全般が同じ雰囲気なのかは定かではないが、私よりも明らかに症状が重そうな方たちばかりで、危機的な方も多く見受けられた。その状況にいることもまた私を怖がらせていたのだと思う。一時間半ほど待った後、呼び出された。名前を呼ばれた後、自分の生年月日を確認され、最初の呼び出しで採血と尿検査をした。その後、また30分ほどベッドのある仕切りで待ったのち、医者により喉、耳、心音を診察された。再び30分ほど待つと、その場で飲む分だけの薬を渡され、「これ以上の薬は市販の薬を買ってください」と手書きのメモを渡され、その日の病院は終わった。結果はただの風邪とのことだったのだろう。日本よりも丁寧に検査してくれたため、大きな病気でないことが分かったことは安心したが、それと同時になぜここまで長引くのかという不安はより一層増した。現地で薬を購入し、3日間寝ていたがそれでも体調は回復しなかった。10日たった日、再び病院に行き4時間ほど時間を取られ、レントゲンまで撮ったが、医者には「あなたは元気です、これ以上気になるならホームドクターに相談してください」と言われて終わった。家に帰った時、ホストファザーは「ストレスが原因ではないか」と言ってくれた。私はそう思うしかなかった。日本の家族が恋しくなったのではないか、実は無理をしていたのではないか。そう思うと少しずつ気が楽になっていった。今はもう治っていると思うが、病院に行ってからは体温を測ることをやめたので具体的にいつ熱が下がったのは分からない。 

 日本の親に相談したところでどうしようもない、電話先で「大丈夫だよ」と伝えても自分自身は大丈夫だと心から思っていない為、それがまた私を苦しくさせていたのだと思う。体調を崩すこと自体が稀な私にとって、今回のこの出来事は不安がいっぱいで心細かった。心の底からもう風邪を引かないように、ストレスを溜めないように対策しなければと思わされた。 

 

 次に家電について述べていきたい。私がここで言いたいのは日本の家電が優秀であることに気づいたということである。まずは洗濯機についてだ。トロントでは、基本的に洗濯物を外干しせず乾燥機を使って完全に干す。洗濯機は日本と同じ、もしくは少し大きい程の大きさであると思うが、乾燥機も洗濯機と同じくらいの大きさである為、日本で占める面積の倍必要というイメージを受ける。また私が使っている洗濯機、乾燥機にはそれぞれ必要時間が常に表示されている工夫もあるが正確とは言い難い。5分から10分は遅れていると思う。また洗濯機と乾燥機にそれぞれ1時間程度かかるため、二時間を洗濯に要することになる。日本と違い、洗濯と乾燥の工程を一続きで行うため、体感としてはとても長く感じる。 

 次にキッチンに場所を移したい。まずは冷蔵庫だ。日本よりだいぶ大きく感じ、構成としては冷蔵庫を縦に二等分し、半分が冷蔵、半分が冷凍とされている。また、食材の量や飲み物、調味料など食に関係するものは日本のものの2倍ほどの大きさがある為大きくなるのは必然だと思う。また、日本と違う点は冷蔵庫に冷水が出る装置があるところである。水道水は飲料水にはならないため、冷水を作るのに冷蔵庫に水道水を溜め浄水をしているようだ。日本と全く異なると感じるのは火を使う家電である。トロントでは基本的にIH コンロ(日本のように人が触っても熱くなく、金属だけが熱くなるというものではなく、しっかりとガスコンロのように熱を感じるコンロである。)が使われ、コンロの下にオーブン、コンロの上に電子レンジが設置されている。コンロは口が5個あるのが家庭ではおそらく一番大きいサイズになるだろう。コンロのつまみを捻ると火加減が調節されるが、火は消えたりついたりするし、弱火と強火はとても極端で初めて料理したときに食材をしっかりと焦がした。またトースターはとても時間がかかるという印象がある。トーストを作るのに5分もかかる。電子レンジは日本だとワット数と秒数を決めるタイプが主流かと思うが、こちらは時間しか決められない。ワット数を調整するとなるとオーブンを使っているところを見かける。 

 そして掃除機が重い。日本の掃除機は片手で前後に使うことができるが、こちらで使っている掃除機は(ダイソンなど日本に共通しているメーカーもあると思うが、ホストファミリーが使っていたのはsharkと呼ばれるメーカーで日本で私は見たことがないため、この掃除機を基準として記述している。)両手で持ち、前後に転がすことが非常に重く大変である。またコードは掃除機の側面に巻き付ける形を取られているため、使う際にコードが絡まることが多々ある。日本の家電は優秀だったんだなあと日々思わされている。 

 

 6月はPride Monthと呼ばれジェンダー平等をトロント中が掲げる月であった。多くのレストラン、カフェ、アパレル店、私が通う学校などいたるところでレインボーフラッグを見かけた。この月のメインの行事は6月30日に開催されたPride Paradeである。TTCと言われる日本でいうJRのような公共交通機関の地下鉄を3駅分ほど使い、路上でLGBTQの自由を求めパレードを行うというものである。ゲイやレズビアンと思われるカップルや、ドラァグクイーンをはじめ、多くの方たちがレインボーをシンボルに練り歩く。歌っている団体や踊っている団体、スピーチを大々的にする団体などそれぞれ個性があってとても面白かった。私はこのイベントを面白いと発言したが、この表現は正しいと思う。もちろん軽蔑の意味を込めて言っているのではない。自分を自由に表現する。これができるのは社会のしがらみや、異性愛という当たり前とされている文化から解放されている象徴であり、一番われわれにとって幸せな主張だと思うからである。だからパレードに集まっている人々は冷たい視線をパレードしている人に向けているわけでなく、また歩いている方たちがマイノリティを感じて怯えているわけでもないのである。明るくありのままでいられる姿を発散しているようで日本人の私からすると日本にはないビッグイベントであるため驚きはしたが、素晴らしいと心から感じた。ジェンダーというとまだまだ日本ではセンシティブな問題として捉えられることが多いように感じる。私の周りでLGBTQを公言している友達等はいない。ただPride Paredeのようにただただ自分が好きに自分を表現することができるようになればいいだけなのではないかと夢かもしれないがそのような未来を期待してしまった。 

 また、このイベントで素晴らしいと感じたもう一つの点は、企業がパレードに参加していた点である。日本でいう大企業と思われる企業が行進やフロート、レインボーのグッズを配っていたりしたのである。衣服用洗剤の会社、カナダの航空会社、ピーナッツバターの会社、TTCAmazon Prime Videoなど大々的に参加していたのである。その中で興味深かったのはAmazon Prime Videoの出し物でKiss Camという大きいパネルのフロートである。そのテレビではサブスクリプション内でのラブロマンス作品内でのキスシーンのほかに、オンタイムでゲイやレズビアンのカップルがキスしているシーンを放映していた。私にとっては衝撃的だったが、カップルたちはとても幸せそうで見ているこちらもなんだかうれしいような、心がほっこりした。 

 

 今月は風邪を引いたせいで三分の一も家で過ごしてしまった。もう自分としては、これも経験であると思うことにするが、それでもやはり、苦い思い出となったのは確かである。7月は短いトロントの夏が本格的に始まる。もっと楽しんでいきたい、もっと英語を使っていきたい。 

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