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大阪・関西万博訪問記2025.10.15

大学院生の見た万博

「いのち輝く未来」を考える—大阪・関西万博の訪問を通じて

相関文化論専攻M1 12575002 望月里恵

 

 国際博覧会(通称:万博)は、5年に一度開催される世界的なイベントであり、2025年の開催地には、日本・大阪が選ばれた。科学技術や持続可能性を軸にして、人間中心の未来社会を描く場として提案された今回の万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」である。今回の万博を訪れることになった背景には、私が現在、取り組んでいる文化人類学の学びが密接に関係している。

大学院で文化人類学を研究する上では、常に「自分の常識が他の正解ではない」という姿勢が求められている。日常生活から社会全体の動きに至るまで、そこに内在する価値観は、地域や状況によって異なる意味を持つ場合がある。そのため、文化や歴史、習慣、慣習などを対比的に捉えることによって、それぞれの特徴が明確になることに加えて、各違いを認識することができる。今回、「いのち輝く未来社会のデザイン」という大きな枠組みの中で、参加国や団体が、どのような未来像を描いているのか。また、個々の未来に日本はどのような立場で関わっていくのかを調査することを目標にした。それによって、万博を通じて「異文化理解」を深めることができると、私は考えた。併せて、私自身が描く「いのち輝く未来」も、これから述べようと思う。

 当日、私はタイやサウジアラビア首長国連邦といった海外パビリオンを中心に巡った。その他にも、政府や企業・団体によるパビリオンも数多く出展されていたが、時間の経過と共に人々の注目を浴びている今回の万博では、希望するパビリオンに入ることは容易ではなかった。こうした状況の中で、私が「異文化理解」の観点で印象に残ったパビリオンは、ベトナムパビリオンとタイパビリオンである。両国は共に東南アジアを代表する国であるが、各展示からは各々の個性が感じられた。

 はじめに、ベトナムパビリオンについて述べる。入場して早々に私たちの目に飛び込んでくるのは、ベトナムに存在する54の民族について紹介されているパネルだ。ベトナム全域の約80%を占めるのが、キン族と呼ばれる民族であり、私たちが日本国内や旅行でベトナムを訪問した際に通常、接するのが彼らである。その他にも、クメール族やタイ族(別名:タイ―族)など、カンボジアやタイといった近隣国にも分布している民族を知ることができる。そして、展示場を更に進むと、「An inclusive society where people are centered」と書かれた大きなボードが登場する。「人間を中心とした包摂的な社会」と掲げられた背景からは、多民族国家であることに加えて、戦後50年という復興途上にあるベトナムの、「いのち輝く未来社会のデザイン」の万博に対する指針を、確認ことができた。その他にも、日越の外交関係やベトナムと世界の関係、今後に期待が高まるベトナムの革新的技術についてなど、多様な展示が行われていた。全体を通じて、活気に満ち溢れたベトナムの歴史や伝統、未来を学ぶことができる空間であったと、私は感じている。またそこには、数多くの分野における持続可能な開発と社会的な平等の実現のために、誰ひとり取り残さない国づくりを目指す姿が現れていたと思う。

続いて、タイパビリオンについて述べる。入場通路には、タイハーブを表現した像があり「いのち輝く未来社会のデザイン」の万博に対して、「健康」に焦点を当てていることが確認できた。また、入場と共にタイ人スタッフとのタイ語に関する歌唱の時間が設けられており、微笑みの国と呼ばれる理由が、すぐに分かる空間でもあった。中心となるテーマは、「大きな幸福のため、いのちを繋ぐタイ」である。その言葉の通り、医療系を中心とした健康長寿への取り組み、更には食文化や自然との共生を通じた「免疫の地としての楽園タイ」が、各展示で示されていた。タイは、私たち日本人にとって様々な分野で、身近な国の一つである。このような状況の中で改めて、タイの文化と魅力が詰まったパビリオンと共に、いのちを繋ぐことについて考えを深めることは、長寿大国として知られる日本に住む私たちにとっても、意義のあるものだと感じた。

私たち人間にはそれぞれ、「いのち」がある。そして、その「いのち」を大切に紡ぐ方法は多種多様であり、正解は存在しない。既に、幾度となく登場している「いのち輝く未来社会のデザイン」という一つの大きなテーマを掲げていても、国や地域、人々によって、表現方法は多彩であることが分かった。地球規模で見ると、とても小さい万博の会場においても今回、私は多くの場面で異文化理解について考えた。それは、国と国だけではなく、地域と地域、人と人との間に存在する違いと向き合うことに等しかった。個々の境界を越えた交流が日常化する時代を生きる私たちにとって、多文化共生社会の実現は課題であると同時に、対立を回避する手段の一つでもある。最後に、私が描く「いのち輝く未来」とは、他を深く理解して知り向き合う力が世界中の人々に備わる社会である。この展望を持って、本レポートの結びとする。


ベトナムに存在する54の民族について紹介されているパネル

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  • ベトナムパビリオン内のカフェで購入したベトナムコーヒー

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  • タイパビリオンの入場列付近:タイハーブの紹介

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  • タイパビリオン内のレストラン:食文化の紹介

鍋で料理をしている男性

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