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卒業生インタビュー2022.02.10

卒業生インタビュー(2) 万里紗さん 前半

こんにちは。

文化学科4年 中島です。

文化学科はその学びの多様さが魅力的な学科ですが、

卒業生がどのようなキャリアを歩んでいるのか、気になる方も多いと思います。

そこで今回、文化学科を2013年度に卒業され、女優・翻訳家・ナレーターとして現在ご活躍されている万里紗さんにインタビューをさせていただきました。

文化学科の杉山直子先生もお招きして、いっしょにお話を伺いました。前半と後半に分けてお届けします。

(写真上から、万里紗さん、杉山先生、中島)







万里紗 MARISSA|アルファエージェンシー (alpha-agency.com)

万里紗 / Marissaさん (@marissa_indigo) / Twitter

万里紗 Marissa(@marissa_indigo) • Instagram写真と動画







今も夢で見るほど、濃かった学生時代


中島:2013年度の文化学研究に掲載されていた万里紗さんの卒業論文「逸脱者の劇場―アネット・メサジェの作品に見る現代社会と身体」を読ませていただきました!

当時から芸術やジェンダーにご関心があったのかなと思ったのですが、学生時代の学びで今に活きている授業や知識はありますか?

 

万里紗さん:文化学科は、もう全部が良かったです!!自分の人生が180度変わったのが大学時代でした。

映画《マトリックス》じゃないですけど、赤いクスリを生まれて初めて飲んで本当の世界に行った、というくらい世界の見え方が断然変わりましたね。それまでモヤモヤしていたことに全部言葉を与えてくれたのが文化学科の授業でした。

こんなニッチなこと、こんなアカデミックじゃなさそうなこと、ポップカルチャーであったり、微細な感覚の話であったり、そんなことまで研究の対象になるの?!と驚きの連続。

メインストリームの学問にあまり興味を持てなかった私の受け皿にもなってくれていたんです。

それから何より先生たちがなんの忖度もなく、組織や現代社会の問題点をズバズバ指摘していて(笑)。そういうのが本当に刺激的でした。

どの授業、どの先生の言葉も一つ残らず吸収したいと思って過ごした4年間です。

杉山先生の授業ではじめてベル・フックスの本を読んだのが印象的で。その授業ではじめてフェミニズムとかジェンダーとか知って『全部運命だったんかい』(著:笛美/亜紀書房)じゃないですけど、自分のモヤモヤしていたことは社会構造と全部つながっているんだって教えてくれた授業でした。

あの授業で得たモノの観方、作品との向き合い方は特に演劇で役立っています。

それと木村先生の授業で、日本で生まれたダンスのジャンルで舞踏というのがあるんですけど、実際にその舞踏の踊り手さんが来てワークショップをやってくださったことがありました。

舞踏っていうのは、ざっくり言うと西洋のバレエのように、重心を上へ上へと持っていく、当時メインストリームになっていた踊りに対し、日本人の、重心を下へ下へ持っていく身体性を活かしていこうよという思想から生まれた踊りです。多くの場合全身白塗りでパフォーマンスします。ワークショップでは、振付を教えてもらうのではなく、踊り手の方が学生たちに指示を出していきました。「おしりの穴からアリが這い出してきて、それが鼻までのぼっていって鼻の穴に入っていくと思って」とか仰るんですよ。で、それぞれがその想像をする。と、勝手に自分の身体がそのイメージに反応して動いていくんです。衝撃的な体験でした。

そんな授業も、俳優のキャリアには役立っています。

オーディションでいきなりアドリブで踊れとか言われても、慌てない。「お尻の穴からアリが這い出してきて…それが鼻の穴に入って…」云々かんぬん、想像して踊ります(笑)。

 

中島:それは結構衝撃的です。万里紗さんは学科トップの成績で卒業されていますよね。大学時代も演劇のお仕事をされていたと思いますが、学業との両立はどのようにされていましたか?

 

万里紗さん:大学時代はそんなに仕事があったわけでもないので、両立っていうほど大変なものでもなかったなっていう記憶がありますね。

《レ・ミゼラブル》(2011年/帝国劇場)に在学中に出ることになったときは、ちょうど前期にすっぽり収まるスケジュールだったので、休演日で絶対学校に行ける日の必修を履修して、あとはもう後期に詰め込んだりしていました。

未だにね、単位が取れない夢とか見るんですよ(笑)。授業受けてないのにテストだけ受けなきゃいけないとか、出席たりてないとか。

 

中島:本当ですか?!それだけきっと学生時代の思い出が濃く残っているんでしょう。

 

万里紗さん:そう、濃いんだと思います。


女優という進路に迷いはいっさいなし!


中島:卒業後、女優になることに迷いや不安やありませんでしたか?

 

万里紗さん:ないと言えば嘘になるかな。私の親が、いっときは女優業に反対だったと思うんです。

父には一度、「女優なんて体ありき。娼婦みたいなものだよ?」って言われたことがあります。でもそうですよね。体がないとできない仕事だから。

母は、もちろん安定した職業か、アカデミックな道を選んでほしいと思っていたようですが、「まぁ行くとこまで行ったら」って、どこかの段階で思ってくれるようになった気がします。

最近知ったんですが母は若い頃、舞台美術を専攻していたらしいんです。演劇も昔からよく観に行っていたようで、私が中学生くらいの頃から芝居のダメ出しもしてくれていました。当時はやかましく思っていましたが、今振り返ると本当に的確なことばかり。だから母が観に来る時は一番緊張します。

そんな母でもいまは、「頑張ってるね、私も頑張らなきゃ」なんて言ってくれるようになりました。年齢と共に丸くなっただけなのかもしれないけど(笑)。

でも、今も勿論毎日不安です。今年のスケジュールが埋まるかもしれないし、全然埋まらないまま進行するかもしれない。そういうことは学生時代とあまり変わらなくって、あの頃も「このオーディション落ちたらもう芝居やめよう」って思っていたオーディションに落ちたり、だけど同じ日に別の作品に決まったりとか、そうやってぎりぎりで続けてきました。

多分、私は数字にならないものが好きなんです。何件契約を取るとか、何円売り上げをあげるとか、そういうのがどうしても性に合わないみたいで(笑)。

そこは無理して自分らしい生き方を曲げてもしょうがない、不幸せになるだけだなって、文化学科の授業で気づかせてもらったので!(笑)。

その自分の生き方に対してだけは、正直になろうと思って選択しています。

 

杉山(敬称略):万里紗さん思わなかったでしょ?堅いお勤めしようかなって。

 

万里紗さん:思わなかったですね(笑)―。        

でも一応女性とキャリアみたいな授業も受けたんですよ。そこで講師の方が、「いかに企業に必要とされる人材になるか」みたいな話をしていて、モヤっとしちゃった。企業に必要とされるんじゃなくて、自分で自分らしい生き方を決めたいって。ほかにも友達に商社ってなにって聞いたり、一般職と総合職の違いを教えてくれる授業を受けてみたり。とはいえあれは「女性と貧困」を扱った社会学系の授業だったけど。そうやって、堅い仕事を選ぶという道も、塩加減みるくらいの努力はしました。

 

杉山:それは大変な努力だったね(笑)。

 

万里紗さん:それなりに頑張ったんです(笑)。

 

杉山:もちろん、会社で働く仕事が駄目だということではなくて、人には向き不向きがあって、万里紗さんは最初から女優になろうと思っていて、他のこともやろうか迷ったりするタイプではないという気がしてました。

 

万里紗さん:先生たちが私を温かく見守ってくださったお陰ですね。

自分の体の中には、確かに、変えられない、大事な何かが既にあるんだけど、それに確信が持てなくて、でもそれを周りの先生方や友人たちが背中を押してくれ、やっと一歩踏み出した、みたいな。日本女子大ってそういうところでした。卒業して10年経った今でも日本女子大の先生方には助けてもらっています。

 

後半に続く



~お知らせ~

万里紗さんの出演される公演情報です!

 

(1)ワールド・シアター・ラボ リーディング「I Call My Brothers」

2月18日・20日 上野ストアハウスにて

作:ヨーナス・ハッサン・ケミーリ 演出:小川絵梨子 翻訳:後藤絢子/翻訳監修:小牧游

出演:亀田佳明、浅野令子、近藤隼、万里紗、杉宮匡紀 

【公演HP】https://iti-japan.or.jp/announce/8049/


(2)理性的な変人たち「オロイカソング」

3月23日~27日 アトリエ第Q藝術にて

作:鎌田エリカ 演出:生田みゆき

出演:滝沢花野、梅村綾子、西岡未央、佐藤千夏、万里紗

【公演HP】https://henzinzin.wixsite.com/mysite

【チケット予約】https://torioki.confetti-web.com/form/1563/8711


(3)日生劇場ファミリーフェスティバル2022「アラジンと魔法の音楽会」

7月30日・31日

演出・構成:粟國淳 作曲・編曲・構成:加藤昌則 指揮:大井剛史

出演:加耒徹、与那城敬、小関明久、万里紗、他

【公演HP】https://www.nissaytheatre.or.jp/schedule/famifes2022aladdin/


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