ゼミ紹介

田中 有美

タナカ ユミ

教員の専門分野・研究対象

アメリカ文学を軸としつつ、英語圏、スペイン語圏、そして日本の文学を視野に入れた比較文学・文化が専門分野です。言語や国境、そして、時間を越えてゆく、文化的なネットワークに関心があります。

ゼミ紹介

受講生が語る~田中有美先生の「文化学演習Ⅱ」はこんな内容!こんな雰囲気!

 

  こんにちは!私達は少人数のゼミですが先生との距離も近く学年関係なく和気あいあいと学んでいます。卒業論文の完成を目指しながら「翻訳studio」という翻訳のプロジェクトも始めています。卒業論文では、アメリカの音楽やダンス、ポップ・カルチャーから、人種問題や文学、女性史など多岐にわたります。


《翻訳スタジオについて》 

  私達のゼミでは、様々な文学作品を翻訳する取り組みを始めました。また、そのプロジェクトには、大学生が一つのものを"作り上げる"という意味合いを込めて「翻訳studio」という名前を付けました。第一回目は、ケイト・ショパンKate Chopin(下にどのような作家の説明があります)の「解放:生きることの寓話」"Emancipation: A Life Fable"を翻訳しました。

    特にその中で、文章内に出てくる"he"をどのように訳すかという点を最も工夫しました。文面では、ある動物(animal)が"he"という代名詞で受けられています。文章全体を読み進めていくと、この檻に閉じ込められている動物が「女性」の比喩ではないかという意見があがりました。話し合いを進めた結果、含みを持たせることで読者側に想像して欲しいという意見にまとまり、"he"という言葉を具体的に訳さず、「その動物」と訳すことにしました。翻訳プロジェクトは、一語一語の意味を調べるだけではなく、その文章における言葉の意味合いを考えなくてはいけない為、とても難しいですが、ゼミのメンバー内で意見を出し合い、完成させた時のやり甲斐が大きく、楽しみを見出しています。ヴィジュアルにもこだわった対訳の完成版はこちらです。



解放by翻訳studio.pdf

1時間の物語by翻訳スタジオ.pdf

ライラックby翻訳スタジオ.pdf


《ケイト・ショパンとは?》

1850年、アメリカ中西部のミズーリ州セントルイス生まれ。アイルランド系の父と、南部のルイジアナに入植したフランス系白人の子孫であるクレオールの母との間に生まれた。5歳の時に父が鉄道事故で亡くなる。19歳でクレオールであるオスカー・ショパンと結婚してニューオーリンズに移り住み、6人の子どもを出産する。1882年に夫がマラリアで急死し、1889年頃から生活のために短編小説を書き始める。作家として順調に進んでいたが、1899年に中編小説『目覚め(The Awakening)』を発表した際、女性の性の目覚めを正面から取り扱った小説である点が当時の人々に受け入れられず、批判された。しかし、女性解放運動が高まってきた1960年代後半からこの作品は再び注目された。まだ社会の伝統的な価値観が要求される時代の中、彼女は女性の自立、自己表現などを主張した作家として現在高く評価されている。


これまでのゼミ生の卒業研究テーマ(抜粋)

  • ハリウッドにおけるアジア人表象の変遷-早川雪洲から 『クレイジー・リッチ!』まで-
  • 海外から見た日本の銭湯文化に関する考察
  • 非認知能力を高める援助方法~アメリカの幼稚園・保育園でのフィールドワークを通じて~
  • 在日日系ブラジル人からみる移民教育の必要性
  • 現代に生きる『若草物語』―日本における児童文学としての受容の考察―
  • 『ハックルベリー・フィンの冒険』日本語訳における「役割語」分析
  • “Representation of Loss, Isolation and Togetherness in Wes Anderson Works: Rushmore, The Royal Tenenbaums and The Life Aquatic with Steve Zissou”
  • ジョイ・コガワの『オバサン』にみる「沈黙」と「書く」ことによる沈黙からの脱却
  • 原作を演じる-エイミー・ベンダー『燃えるスカートの少女』日本語訳の考察-
  • ポール・オースター『幽霊たち』におけるアイデンティティ表象-日米受容の差-
  • アメリカン・カートゥーンにおける米文化描写と日米比較―ドリーム・ワークス作品を中心に−
  • 家で教育するという選択-日本での積極的なホームスクール実施に向けて-
  • 現代の日本で「食」の教育を行うためには−アリス・ウォータースのエディブル・スクールヤードに学ぶ−
  • スニーカーがもたらす社会への影響-日米比較から見えるスニーカーの存在価値-
  • なぜ日本ではスヌーピーがキャラクターとして一人歩きしてきたのか−『ピーナッツ』の日本の需要から見るキャラクタービジネス−
  • 文化のグローバル化―トランスローカルなラップミュージック
  • 英語版の台詞字幕から考えるジブリ映画-『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』を用いて-
  • 『シカゴ』に生きる女性たち
  • 『菊と刀-日本文化の型』から見える日本人像について

教員からのメッセージ

私が感じる国際文化学科の魅力

 全ての学生が一度は日本を飛び出し、異文化に深く身を投じる経験をもちます。五感を総動員して異文化を受けとめる経験をした上で、日本を、そして自分自身を、相対化して見ることができる大きな視野身につけていただけるカリキュラムになっていることです。


国際文化学科で学んでほしいこと

異文化と出会うための外国語を、少なくとも一言語、一生付き合っていくつもりでしっかり学んでください。きっと、その言語が柔軟なものの見方を教えてくれると思います。


私のおすすめ

W・フォークナーの『響きと怒り』(岩波文庫)。私が初めて読んだ時は、不可解な語りに戸惑い、わけがわかりませんでした。何度も読んで理解する読書もいいものです。


国際文化学科をめざすみなさんへ

 やらされる「お勉強」は高校まで。大学では、自分で学びたいことを見つけ、学んでいく段取りを作っていきます。自分のことは自分でプロデュースするのです。そのためにも、常に好奇心のアンテナを張りめぐらせ、興味のあるものを察知したら、徹底的に調べ、経験してみてもらいたいと思います。